第20回 シリーズ血糖 ①食後の低血糖が体に与えるストレスとは?〜現代人に増えている“隠れ低血糖”〜
こんにちは、鍼灸整骨うりずんです。
今回から3回にわたって、「低...etc
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■はじめに
こんにちは。
千葉市の妊活・不妊治療専門の鍼灸院「鍼灸整骨うりずん」の金親です。
第6章第3話では、卵子の中に多く存在するミトコンドリアと、そこで作られるATPについて解説しました。
ATPは、卵子が成熟したり、染色体を正しく分けたり、受精後に細胞分裂を進めたりするために使われる大切なエネルギー源です。
そして、ミトコンドリアがATPを作る過程で生じるものの一つが、「活性酸素(ROS:Reactive Oxygen Species)」です。
「活性酸素」と聞くと、身体を老化させる悪いものというイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、活性酸素はすべて身体に悪いわけではありません。
私たちの身体では日常的に活性酸素が作られており、適度な量であれば、細胞同士の情報伝達や身体を守る仕組みなどにも利用されています。
問題になるのは、活性酸素が増えすぎて、身体に備わっている防御の仕組みとのバランスが崩れたときです。
この状態を酸化ストレスといいます。
今回は、酸化ストレスとは何なのか、そして卵子の質とどのように関係しているのかを、できるだけわかりやすく解説していきます。
■この話のポイント
• 活性酸素は身体の中で自然に作られており、すべてが悪いわけではない
• 活性酸素の発生と、それを抑える抗酸化の仕組みのバランスが大切
• このバランスが崩れた状態を「酸化ストレス」という
• 過剰な酸化ストレスは、ミトコンドリアやDNA、細胞膜などに影響を与えることがある
• 卵子では、過剰な酸化ストレスが、成熟や染色体の分配、受精後の発育などへの影響が研究されている
• 年齢や生活習慣、炎症、代謝状態など、さまざまな要因が酸化ストレスと関係している
■30秒でわかる「酸化ストレスと卵子」
私たちの身体では、呼吸によって取り込んだ酸素を使いながら、細胞が活動するためのエネルギーを作っています。
その過程などで生じるのが活性酸素です。
活性酸素は身体に必要な働きも持っているため、単純に「減らせばよい」というものではありません。
一方で、活性酸素が増えすぎたり、身体の抗酸化作用が追いつかなくなったりすると、細胞を構成する脂質やタンパク質、DNAなどが傷つきやすくなります。
これが「酸化ストレス」です。
卵子についても、酸化ストレスが強くなることで、ミトコンドリアの働きやDNA、染色体を分ける仕組みなどに影響することが研究されています。
つまり大切なのは、「活性酸素をゼロにすること」ではなく、「作る側と守る側のバランスを保つこと」なのです。
■そもそも活性酸素とは?
私たちは呼吸によって酸素を身体に取り込んでいます。
その酸素は、細胞の中でエネルギーを作るためにも使われています。
第3話で紹介したミトコンドリアも、その代表的な場所です。
ミトコンドリアでは、酸素を利用してATPを作ります。
その過程で、一部の酸素から反応性の高い物質が生じます。
これらをまとめて「活性酸素(ROS)」と呼びます。
活性酸素という名前から、「身体を酸化させる悪い物質」と思われがちですが、本来は身体の中で普通に作られているものです。
たとえば、免疫細胞が細菌などから身体を守るときにも活性酸素が利用されます。
また、細胞の働きを調節するための情報伝達にも関わっています。
女性の生殖機能でも、適度な活性酸素は卵胞の発育や排卵などに関係していると考えられています。
そのため、「活性酸素=悪いもの」ではありません。
大切なのは、その量とバランスです。

■身体には活性酸素から守る仕組みがある
活性酸素が作られているのであれば、私たちの細胞は常に傷ついてしまうのでしょうか。
もちろん、そうではありません。
身体には、増えすぎた活性酸素から細胞を守る抗酸化システムが備わっています。
代表的なものには、
• SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)
• カタラーゼ
• グルタチオンペルオキシダーゼ
などの酵素があります。
もちろん、これらの名前を覚える必要はありません。
ここでは、「身体の中には、活性酸素を処理して細胞を守る仕組みがある」と考えてください。
さらに、食事から摂取するビタミンCやビタミンEなども、身体の抗酸化に関わっています。
卵子が育つ卵胞の中にも、このような酸化と抗酸化のバランスを調節する仕組みがあります。
■「酸化ストレス」とはバランスが崩れた状態
活性酸素が作られていても、それを処理する仕組みが十分に働いていれば、バランスは保たれます。
ところが、 活性酸素が作られる量 が身体が処理できる量をこえてしまう状態 となると、細胞が酸化による影響を受けやすくなります。
これが「酸化ストレス」です。
イメージとしては、「火」と「消火する力」の関係に近いかもしれません。
小さな火であれば問題なく管理できます。
しかし、火が大きくなったり、消火する力が弱くなったりすると、周囲まで傷つけてしまいます。
身体の中でも同じように、「活性酸素が増えること」だけでなく、「抗酸化する力が低下すること」でも酸化ストレスは強くなります。
つまり、酸化ストレスは活性酸素だけを見るのではなく、「酸化と抗酸化のバランス」として考える必要があります。

■酸化ストレスが強くなると細胞では何が起こる?
酸化ストレスが過剰になると、細胞を構成しているさまざまな物質が影響を受けます。
代表的なのが、「細胞膜を作る脂質」、「タンパク質」、「DNA」、「ミトコンドリア」などです。
細胞膜は、細胞の内側と外側を隔てるだけではなく、物質の出入りや細胞同士の情報伝達にも関わっています。
タンパク質は、酵素や細胞の構造など、さまざまな働きを担っています。
DNAには、細胞が正常に働くために必要な遺伝情報が保存されています。
そしてミトコンドリアは、ATPを作る重要な役割を持っています。
酸化ストレスが過剰になると、こうした細胞の重要な部分に影響が及び、細胞本来の働きが低下する一因になると考えられています。

■卵子はミトコンドリアをたくさん持っている
ここで第3話の内容につながります。
成熟した卵子には、非常に多くのミトコンドリアが存在します。
卵子は、
• 成熟する
• 染色体を分ける
• 受精する
• 受精後に細胞分裂を始める
といった重要な場面でエネルギーを必要とするためです。
ミトコンドリアはATPを作る一方で、活性酸素の発生源の一つでもあります。
そして、ミトコンドリア自身も酸化ストレスの影響を受ける場所です。
酸化ストレスによってミトコンドリアの働きが低下すると、ATPを作る能力にも影響することがあります。
さらにミトコンドリアの働きが乱れることで、活性酸素の発生が増える場合もあります。
つまり、
酸化ストレス
↓
ミトコンドリアへの影響
↓
ATP産生への影響
↓
さらに酸化と抗酸化のバランスが乱れる
という悪循環につながる可能性があります。

■染色体を正しく分ける仕組みにも関係する
卵子が成熟するときには、染色体を正しく分ける必要があります。
第2話で紹介した紡錘体が、この作業を担っています。
紡錘体は、染色体をそれぞれ正しい方向へ分けるための重要な構造です。
この仕組みがうまく働かないと、染色体の数に異常が生じる原因の一つになります。
酸化ストレスは、ミトコンドリア機能だけでなく、卵子の成熟や紡錘体の形成、染色体の分配に関わる仕組みに影響することが、主に基礎研究や動物研究で示されています。
そのため、 【酸化ストレス → 卵子の細胞機能への影響 → 染色体を正しく分ける仕組みへの影響】 という経路も、卵子の質を考えるうえで研究されているテーマの一つです。
ただし、ヒトの卵子では年齢をはじめ多くの要因が複雑に関係しています。
酸化ストレスだけで染色体異常が起こる、と単純に考えることはできません。
■DNAも酸化ストレスの影響を受ける
DNAも酸化ストレスの影響を受ける物質の一つです。
私たちの細胞では、日常的にDNAに小さな損傷が生じています。
しかし、細胞にはDNAを修復する仕組みが備わっています。
そのため、DNAに傷が生じたからといって、すぐに問題が起こるわけではありません。
一方、酸化ストレスが強くなるとDNAへの損傷が増え、修復とのバランスが崩れることがあります。
卵子についても、酸化ストレスによるDNA損傷と、卵子の成熟や受精後の発育との関係が研究されています。
ここでも重要なのは、「酸化ストレスがあれば妊娠できないという意味ではない」ということです。
卵子の状態や妊娠の成立には、多くの要因が関係しています。
■卵子は「卵胞」という環境の中で育っている
卵子だけを見るのではなく、その周囲の環境にも目を向ける必要があります。
卵巣の中では、卵子は卵胞という袋状の構造の中で育っています。
その中には卵胞液と呼ばれる液体があり、卵子の周囲には卵子の成長を支える細胞も存在しています。
つまり、卵子は単独で育っているわけではありません。
周囲の細胞から栄養やさまざまな情報を受け取りながら成熟していきます。
そのため、研究では卵子そのものだけでなく、卵胞液の酸化ストレスの状態についても調べられています。
卵胞液の酸化・抗酸化バランスと、卵子の成熟度や受精、胚の発育、体外受精の成績との関連を報告した研究があります。
一方で、研究によって測定方法や結果にばらつきがあり、現時点では「この数値なら卵子の質がよい」と判断できるような確立した指標にはなっていません。
ここは、酸化ストレス研究を考えるうえで重要な点です。
■酸化ストレスはなぜ増えるの?
ここまで、酸化ストレスは「活性酸素が増えすぎたり、身体の抗酸化作用が追いつかなくなったりして、バランスが崩れた状態」と説明してきました。
では、なぜこのバランスが崩れるのでしょうか。
酸化ストレスが強くなる背景には、大きく分けて二つあります。
一つは、活性酸素が作られる量が増えること。
もう一つは、増えた活性酸素を処理する抗酸化の働きが追いつかなくなることです。
このバランスには、さまざまな要因が関係しています。
たとえば、
• 加齢
• 喫煙
• 過度の飲酒
• 肥満や代謝の乱れ
• 慢性的な炎症
• 睡眠不足
• 強いストレスが続く生活
• 大気汚染など一部の環境因子
などは、酸化ストレスとの関連が研究されています。
もちろん、一度寝不足になったからといって、すぐに卵子の質が低下するという意味ではありません。
私たちの身体には、活性酸素を処理し、酸化と抗酸化のバランスを保つ仕組みが備わっています。
大切なのは、特定の一日や一つの生活習慣だけを見るのではなく、身体が酸化と抗酸化のバランスを保ちやすい状態を日頃から整えていくことです。
■「抗酸化作用のあるものをたくさん摂ればよい」わけではない
ここまで読むと、「それなら抗酸化作用のある食品やサプリメントをたくさん摂ればよいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、最初に説明したように、活性酸素には身体に必要な働きもあります。
そのため、活性酸素をできるだけ減らせばよいというわけではありません。大切なのは、「酸化と抗酸化のバランスを保つこと」です。
抗酸化に関わる栄養素やサプリメントについては多くの研究が行われていますが、酸化ストレスの指標が改善したからといって、それがそのまま「卵子の質が改善する」「妊娠率や出生率が上がる」ということを意味するわけではありません。
また、サプリメントを飲めば酸化ストレスの問題がすべて解決するわけでもなく、誰にでも同じ効果が期待できるとは限りません。
まず大切なのは、睡眠、運動、食事、喫煙や飲酒などを見直し、身体が本来持っている酸化と抗酸化のバランスを保ちやすい環境を整えることです。
そのうえで、食事だけでは不足しやすい栄養素がある場合などには、サプリメントで補うことも選択肢の一つになります。
妊活中は、必要性や種類、摂取量を確認し、必要に応じて医師や管理栄養士などの専門家に相談しながら取り入れるとよいでしょう。
■妊活では何を意識すればよい?
酸化ストレスだけを特別なものとして考える必要はありません。
妊活中に大切なのは、身体全体の健康を整えることです。
たとえば、
【十分な睡眠をとること。】
睡眠はホルモン分泌や自律神経、代謝など身体のさまざまな機能と関係しています。
【適度に身体を動かすこと。】
運動は代謝や循環を整えるうえで大切です。ただし、強すぎる運動は逆に活性酸素の発生を増やすこともあります。
【偏りの少ない食事をとること。】
身体の抗酸化システムが働くためには、ビタミンやミネラル、タンパク質などさまざまな栄養素が必要です。
【喫煙を避けること。】
喫煙は酸化ストレスだけでなく、女性の妊孕性(妊娠する力)そのものへの悪影響が知られています。
このほか、飲酒、体重、血糖を含めた代謝状態なども、身体全体の健康という視点から考えていくことが大切です。
重要なのは、「酸化ストレスを減らせば卵子の質がよくなる」という一つの答えに飛びつくのではなく、「卵子が育つ身体全体の環境を整えていく」という視点です。

■年齢と酸化ストレスは別々の問題ではない
第2話では、年齢と卵子の質について説明しました。
そして第3話ではミトコンドリアについて説明しました。
実は、この3つは別々の話ではありません。
年齢を重ねることで、ミトコンドリアの働きや細胞の抗酸化システムにも変化が起こります。
その結果、酸化と抗酸化のバランスが変化し、酸化ストレスの影響を受けやすくなることが考えられています。
つまり、
年齢
↓
ミトコンドリア機能の変化
↓
酸化・抗酸化バランスの変化
↓
卵子の細胞機能への影響
というように、それぞれの要因は互いにつながっています。
これが、第6章で「卵子の質を左右する要因」を一つずつ学んでいる理由でもあります。
■まとめ
今回は、酸化ストレスと卵子の質について解説しました。
活性酸素は身体の中で自然に作られており、細胞の情報伝達や免疫、生殖機能などにも関わっています。
そのため、活性酸素そのものが悪いわけではありません。
問題になるのは、
活性酸素が作られる量と、それを処理する抗酸化作用のバランスが崩れたときです。
この状態を酸化ストレスといいます。
過剰な酸化ストレスは、
● ミトコンドリア
● DNA
● 細胞膜
● タンパク質
● 卵子の成熟
● 染色体を分ける仕組み
などに影響することが研究されています。
ただし、酸化ストレスだけで卵子の質や妊娠の成否が決まるわけではありません。
年齢、遺伝的要因、卵巣の状態、代謝、生活習慣など、さまざまな要因が複雑に関係しています。
だからこそ、特定の食品やサプリメントだけに答えを求めるのではなく、睡眠、運動、食事、喫煙、飲酒なども含めて、身体全体の健康を整えていく視点が大切です。
■鍼灸整骨うりずんでは
鍼灸整骨うりずんでは、妊活中の方の身体を「卵巣だけ」の問題として考えるのではなく、睡眠、食事、運動、ストレス、冷えや身体活動など、日常生活も含めて確認しています。
年齢そのものを変えることはできません。
また、鍼灸によって卵子の染色体異常を防げる、卵子の質を直接改善できる、と断定できる科学的根拠も現時点ではありません。
一方で、妊娠を目指すうえでは、身体全体の健康状態を整え、必要な不妊治療を適切な時期に受けることが大切です。
鍼灸整骨うりずんでは、不妊治療を受けている方についても、治療の予定や検査結果などを確認しながら、妊活を支える身体づくりを一緒に考えていきます。
■次回以降の学習ロードマップ
第6章では、卵子の質に影響するさまざまな要因を、一つずつ掘り下げて解説しています。
これまで、年齢によって卵子にどのような変化が起こるのか、そして卵子の働きを支えるミトコンドリアとATPについて学んできました。
今回の第4話では、ミトコンドリアとも深く関係する「酸化ストレス」について解説しました。
次回は「糖化(AGEs)」へ進み、その後は睡眠やストレス、血流など、日常生活と卵子を育てる環境との関係について学んでいきます。
順番に読み進めることで、それぞれの要因が単独で存在するのではなく、互いに関係しながら卵子や卵巣の環境に影響していることが理解しやすくなります。
📖 第6章 第1話
卵子の質を左右する5つの要因とは?
年齢、ミトコンドリア、酸化ストレス、糖化、睡眠・ストレス・血流など、卵子の質を考えるうえで知っておきたい要因の全体像を解説します。
⬇
📖 第6章 第2話
年齢はなぜ卵子の質に影響するのか?
年齢とともに卵子では何が変化するのか、染色体やミトコンドリアなど、細胞の仕組みからわかりやすく解説します。
⬇
📖 第6章 第3話
ミトコンドリアはなぜ卵子の質に重要なのか?|ATPと卵子のエネルギーの仕組み
卵子に多くのミトコンドリアが存在する理由と、成熟、染色体の分配、受精、受精後の発育などを支えるATPについて解説します。
⬇
📖 第6章 第4話
酸化ストレスはなぜ卵子の質に影響するのか?|活性酸素と抗酸化の仕組み(この記事)
活性酸素はすべてが悪いわけではありません。酸化と抗酸化のバランスが崩れる「酸化ストレス」と、ミトコンドリアやDNA、卵子の働きとの関係について解説します。
⬇
📖 第6章 第5話
糖化(AGEs)はなぜ卵子の質に影響するのか?
糖とタンパク質などが反応して起こる「糖化」と、AGEs(終末糖化産物)が作られる仕組み、酸化ストレスや炎症、卵巣との関係について解説します。
【近日公開】
⬇
📖 第6章 第6話
睡眠・ストレス・血流は卵子の質とどう関係するのか?
睡眠やストレス、自律神経、血流など、毎日の生活と卵子が育つ身体の環境との関係について解説します。
【近日公開】
※公開後は「近日公開」の部分から各記事へ移動できるようになります。
妊活の教科書シリーズ
📖 第1章 不妊症とは?|妊娠の確率と「1年」が目安とされる理由
📖 第3章 排卵とは?|卵胞が育ち、身体が妊娠へ向かう一連の流れ
📖 第4章 FSH・エストロゲン・LHとは?|ホルモンが連携して排卵を導く仕組み
📖 第6章 第3話 ミトコンドリアはなぜ卵子の質に重要なのか?
📖 第6章 第4話 酸化ストレスはなぜ卵子に影響するのか?(この話)
📖 第6章 第5話 糖化(AGEs)はなぜ卵子の質に影響するのか?(次回)
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